使おうAED 減らせ突然死

AEDを活かした心臓突然死を減らすための提言

序文

2014年は、日本で一般市民がAED(自動体外式除細動器)を使うことができるようになってから10年目の節目の年となります。 今、日本は世界で最もAEDの普及が進んだ国となりました。 しかし、日本では年間7万人を超える方々が心臓病が原因の突然の心停止となっていますが、心停止となった際にAEDが使われるケースはほんの一部です。 普及しつつあるAEDを有効に活用すれば、そしてAEDの更に効果的な場所への配備を推進していけば、救える命はたくさんあります。

私たち『減らせ突然死 ~使おうAED~ 』実行委員会は、AEDを積極的に活用し、突然心停止となってしまった方を1人でも多く救命するために、以下の目標と具体的な方策を提言いたします。

皆様のご理解とご支援をお願い申し上げます。

減らせ突然死プロジェクトの目標

FROM 4 TO 5

  1. 突然心臓が止まってしまった人へ心肺蘇生を実施する割合を4割から5割へ
  2. AEDによる電気ショック実施率を4%から5%へ
  3. AEDで電気ショックを受けた方の救命率を4割から5割へ

解説:
心臓突然死の撲滅が最終的なゴールですが、減らせ突然死プロジェクトでは、1年間の活動を通じた目標を、最新のデータを踏まえて以下のように設定しました。

  1. 現在、突然心臓が止まってしまった人へ、そばにいた方が胸骨圧迫(心臓マッサージ)などの心肺蘇生を実施した割合は44.3%です。これを50%以上へ引き上げることを目指します。
  2. 現在、倒れるところを目撃された、心臓が原因の心停止に対するAEDによる電気ショック実施率は3.7%です。これを5%以上に引き上げることを目指します。
  3. 現在、倒れるところを目撃された、心臓が原因の心停止例のうち、AEDによる電気ショックを受けた方々の救命率は41.4%です。 これを、50%以上、すなわちAEDによる電気ショックを受けた方の半分以上を救命することを目指します。
    (データはいずれもH24年 総務省消防庁救急蘇生統計より引用)

減らせ突然死プロジェクトの目標『FROM 4 TO 5』実現のための3つの方策

  1. 救急の現場での胸骨圧迫(心臓マッサージ)とAED使用を促すヒントの提供
  2. 学校やスポーツ現場における心肺蘇生教育の促進
  3. 5分以内の電気ショック実現に向けたAEDの戦略的設置と管理の徹底

解説:
減らせ突然死プロジェクトでは、『FROM 4 to 5』という目標を達成し、救いうる命を救うために、以下の具体的な方策を提言します。

  1. 救急の現場での胸骨圧迫(心臓マッサージ)とAED使用を促すヒントの提供

    心停止の現場では、誰もが混乱し、パニックに陥ります。 仮に心肺蘇生やAEDの使用に関わる知識を持っていたとしても、自信を持って即座に行動を起こすことは容易ではありません。 『迷ったり、判断に困ったら、胸骨圧迫を開始し、AEDの電源を入れ指示に従う!』というメッセージを強化することによって、心肺蘇生の実施、AEDの積極的な使用を促す必要があります。 具体的に、以下の取り組みを進めます。

    • 判断に迷う状況であることを想定して、救命行動への障壁を取り除くための教育・啓発方法の再検討と提案
    • 心停止への対応は、一刻を争い、救急隊などの専門家を待っている猶予がないこと、じっと待っていては救命できないことの周知
    • AEDには、診断機能があり、(電気ショックの必要がない場合に間違ってショックを与えることはなく)心停止でなかったとしても安全に使用できること、心停止か否か判断に迷った際に音声でサポートをしてくれることの周知
    • 119番通報をすれば、消防機関が電話で心肺蘇生法、AEDの使用法を助言してくれることの周知
    • 何も行動しないより、完璧でなくても何かできることをしたほうが救命の可能性が高まること、胸骨圧迫だけでも十分効果のあることの周知
    • 万が一救命できなくても、責任を問われることはないことの周知
  2. 学校やスポーツ現場における心肺蘇生教育の促進

    全ての国民が、心臓突然死の実態を知り、心肺蘇生を試み、AEDを使用できるようにするためには、従来以上に心肺蘇生法の教育を強化する必要があり、それは若い年齢層から広めることが効果的です。 また心臓突然死が運動時に起こりやすいことも知られており、安全なスポーツ環境の確保のためにも学校教育やスポーツ現場でのAED積極使用を含めた蘇生教育の強化を推進します。

    • 学校安全・防災教育と関連付けた小学校からの心肺蘇生教育の推進
    • 中学校、高等学校での実技を伴う心肺蘇生教育の推進
    • 次期学習指導要領での心肺蘇生・AED教育の位置づけ強化
    • 学校を通じた、保護者、地域への心肺蘇生、AEDに関わる教育、啓発の強化
    • スポーツ関係者、関連施設への心肺蘇生、AEDに関わる教育、啓発の強化
    • 学校教育・スポーツ現場での心肺蘇生教育導入を促す指導用コンテンツの強化
    参考資料:日本臨床救急医学会 学校での心肺蘇生教育の普及に向けての提言、同学会 学校での心肺蘇生法の指導法、指導内容に関するコンセンサス、さいたま市 ASUKAモデル
  3. 5分以内の電気ショック実現に向けたAEDの戦略的設置と管理の徹底

    AEDを有効に活用し、救命の効果を高めるためには、単に設置するだけでなく、心停止から5分以内の電気ショックが実現できるように効果的、効率的な設置を進める必要があります。 さらに、設置されたAEDをいつでも利用できるように、平時から適切な管理を徹底する必要もあります。

    • AEDの設置場所や配置に関する具体的かつ根拠のある基準の周知(ガイドラインの周知促進)
    • 緊急時にAED設置場所まで適切に誘導できる位置案内の工夫と強化
    • 共通ロゴマークの提言
    • AEDの管理実態と配置情報の全国的収集とその公開の推進
    • AED設置者への教育・訓練の促進
    参考資料:日本救急医療財団 AEDの適正配置に関するガイドライン、日本循環器学会AED検討委員会 日本心臓財団 AEDの具体的設置・配置基準に関する提言
平成24年4月22日
減らせ突然死 ~使おうAED~ 実行委員会
委員長 三田村 秀雄